2005年〜

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エンジン開発履歴』 後にSBレース用のE/Gとなるスーパースポーツ車のエンジンを量産する。
これまではエンジンの高性能化の仕事だけだったが・・・
  初めて馬力は無くても良いから! の好きではない仕事が廻って来た。
好きに設計させてくれれば、400ccとしての出力が出せるのであるが、
変更可能部品の制約が多過ぎた。
  嘘か本当か判らないが、営業からは馬力の無さが乗り易さに通じて中型
免許しか持っていない女の子に人気だったの話しである。
2008年に排ガス規制で廃版となっている。
後日、W800が発売される。
  噂では聞いており、誰が設計担当なのかは知らないが、エンジンとして
は適正進化だと思うスケールアップ版となるW800が開発されていた。
  機種名   発売年 排気量  最高出力        B×S     S/B比
  (W1) 1966年  624cc  45ps/6,500rpm  φ74×72.8   0.98
  W650 1999年  675cc  48ps/6,500rpm  φ72×83     1.15
  W400 2006年  399cc  29ps/7,500rpm  φ72×49     0.68
  W800 2100年  773cc  52ps/6,500rpm  φ77×83     1.08
W400のみがスポーツバイクでは考えられない程のショートストークとなっている。
開発コード:4042
W400のエンジン開発


W650をベースにW400エンジンを開発する。
 
久々にストリート車開発グループに戻って来たが、頂いた仕事は開発コード:4042W650をストロークダウンして中型免許で乗れるW400を作ることであった。
しかも新入社員の研修を兼ねて指導員が片手間で行っていた仕事であり、本業が忙しくなったことで、全ての業務が小生1一人に引き継がれた。
  W400は国内営業部から中型免許で乗れる400cc車が欲しいとの要求であり、スケールアップでは名車が生まれるが、スケールダウンでは碌なエンジンが出来ないと猛反対したが、営業部からは出力は要らない、400ccであれば良いとの返答であった。
仕事なのでやりますけど・・・
  変更部品を出来るだけ少なくし、安価に変更して欲しいとの要求があったらしく、前任者はクランクシャフトのストロークダウンとピストンの新作だけで済まそうと計画していた。 超ショートストロークエンジンになる訳でクラッシクバイクでは在り得ない。
試作エンジンが出来たが、予想通り出力は出なく250ccより遅いバイクになってしまった。 さてどうするか? T/Mギヤ比を全てクローズ化し、排気系もやり直すと250ccとは同等に走る様になったが、恥ずかしくてこんなエンジンは量産出来ないので燃焼室形状も見直す。 営業部からは出力が低いが女の子は乗り易いと言っているとのうそ臭い話しが出て来た。 出力の低いのは営業部に責任を取って貰って量産を立ち上げる。
まずはW650に文句を言いたい。
  1966年にメグロから技術供与されて量産したのが ”W1”であるが、それをリメークしたのが ”W650”である。 これまで ”W650”に何の興味も無く無関心であったが、”W400 ”の開発に関わることになり、個人的に思うのがデザインの要望で採用されたと思わるカムシャフトの駆動に何の技術メリットも無いシャフトとベベルギヤが使われたことである。 カムシャフトのシャフト駆動は ”W1”に使われている訳ではなく、
デザイン要求以外に技術的にはデメットばかりで、全然、採用する必要は無かったのだ。
1966年に量産開始の初代 ”W1 650”。
エンジンバルブはOHVでプッシュロッドは外観から見えていない。
写真は ”W400”であるが外観の違いはシートのアンコが35mm低くなっているだけである。
デザイン上採用されたと思われるカムのシャフト駆動は技術上は百害あって一利無しである。
650cc → 400ccの排気量ダウンはストロークダウンだけで行われているので、プストンが
ヘッド付近で往復していることになるので、ピストンの冷却が悪くなっている。
技術的にはロングストロークエンジンにしたかったところである。
”W400”の ”W650”からの変更点は基本的にはピストンストロークでの排気量ダウンであるが、クランクシャフト、コンロッド、ピストンの部品を変更している。 走行性上ではT/Mのギヤレシオを全て変更している。
カムシャフトの駆動にシャフトドライブの何が嫌なのか。
シャフトドライブとするには上下2ヶ所にベベルギヤが必要となり、
カムからトルク変動がベベルギヤの歯打ち音として出て来るので、
歯打ち音とせり音の相反する調整が職人芸となる。
シリンダはW650と共通でOK。
ピストンは圧縮比合わせで新作となる。